神は人を、神の愛を受けるものとして創られた。それゆえ人の心の底には無意識のうちに、いつも神の愛への憧憬、呼びかけがある。

あるときふっと、心の中に神の訪れを感じて、神に語りかけたい気持ちが生じ神はどこにおられるのか探し始める。

 

1/7 「教えてください、わたしの魂の愛する者よ。

     あなたはどこで群れを飼い

     真昼には、どこで群れを憩わせるのでしょう。

     どうして私はさまようもののように、

あなたの群れの傍らにいなければならないのですか。」

 

すると愛するもの、神は速やかに答えられる。

  1/15  「わが愛する者よ、あなたは美しい。

     あなたは美しく、その眼は鳩のようだ。」

 

愛する者の目から見ると、何もかも美しい。肌の黒さ(1/6)も、心の不完全さも愛らしい。

神は人間を愛されるので、人間はどのようであっても神の目からは美しく、価値がある。

 

人間からの小さな呼びかけを聞かれると、神は速やかにご自分からやってこられる。「あなたの心に祈りが芽生え、

まだ口に登らぬ先に、私はもうあなたのそばにいる。(イザヤ65:24)」と。

 

  2/8〜14 恋しい人の声が聞こえます。

     山を越え、丘を跳んでやって来ます。

恋しい人はかもしかのよう、若い雄鹿のようです。

     ごらんなさい、もう家の外に立って窓からうかがい

     格子の外からのぞいています。

恋しい人は言います。

     「わが愛する者よ、わが麗しき者よ、さあ、立って出ておいで。

     ごらん、冬は去り、雨の季節は終った。

花は地に咲きいで、小鳥の歌うときが来た。

     この里にも山鳩の声が聞こえる。

     いちじくの実は熟し、ぶどうの花は香る。

 愛する人よ、麗しいひとよ、さあ立って出ておいで。

 岩の裂け目、崖の穴に潜む私の鳩よ、姿を見せ、声を聞かせておくれ。

 お前の声は快く、お前の姿は愛らしい。」 

 

ここで、美しい一致の時を迎える。

  2/16 「わが愛する者は私のもの、私はあの人のもの。

     百合の中で群れを飼ってる人のもの。

 

最初は、甘い蜜のような喜びを持つ。しかしいつかこの喜びが消え「霊的暗夜」とも言われる暗い夜が訪れる。「感覚の受動的浄化」*1

の時である。神を求めている人にとって、この時期は苦しく、花嫁は花婿を探し求める。

 

  3/1  「夜ごと、床の上で、わが魂の愛する者を訪ねた。

私は彼を訪ねたが、見つからなかった。彼を呼んだが答えなかった。

     起きだして町を巡り、通りや広場をめぐって

 恋い慕う人を求めよう。

     求めても、あの人は見つかりません。

     わたしは町をめぐる夜警に会ったので、

     わたしの恋い慕う人を見かけましたか。とたずねた。」

 

花嫁は会う人ごとに尋ねる。そしてしばらく行くと、

3/4  「彼らに別れるとすぐに わたしの魂の愛する者に出会った。

     私は彼を引き留めて行かせず、ついにわが母の家に、連れて行った。」

 

彼女はもう花婿を離すまいとして、自分の住まいへ連れて行こうとする。苦労して探している間に、彼女の愛はもっと強く、深くなる。

今の一致は、前の甘いものよりも、もっと深刻で細やかである。

 

花婿は言う。

  4/1-2「わが愛する者よ、あなたは美しい。

あなたは美しく、その眼は鳩のよう、ベールの奥に潜んでいる。

髪はギレアドの山を駆け下る山羊の群れ、

歯は雌羊の群れ。毛を駆られ、洗い場から昇ってくる雌羊の群れのようだ。

  4/6-7 夕べの風が騒ぎ、影が闇にまぎれる前に、ミルラの山に登ろう。

恋人よ、あなたは何もかも美しく、少しの陰りもない。」

 

花婿は花嫁に、自分の方へおいでと招く。今いるあなたの生活を離れて、自分の方へおいでと招く。

(レバノン、アマナは愛する故郷の山々。)

4/8 「わが花嫁よ、レバノンからおいで、おいで、レバノンから出ておいで。

    アマナの頂から、セニル、ヘルモンの頂から

    獅子の隠れ家、豹の住む山から下りておいで。」

    

生活の中のいろいろな心の囚われ、花婿は愛着を離れよと呼びかける。獅子の隠れ家、豹の住む山などは、スリルはあるが

危険に満ちた生活から去れと呼びかける。そして私と一緒に来なさいと。

 

しばらくするとまた、暗い夜が訪れる。「霊の受動的暗夜」である。*2一致の喜びを味わった花嫁は、もう彼を忘れることは出来ない。

訪れを待って心はいつも目覚めていて、忍耐強く待っている。

 

  5/2 「眠っていても、私の心は目覚めていました。

    聞いてごらん。恋しい人の声がする、戸を叩いています。

    『私の妹、愛する人よ、開けておくれ

わたしの鳩、清らかなおとめよ。

    わたしの頭は霜に 髪は夜の露にぬれてしまった。』」

 

声は外から、より深くなった心の内面に響いてくる。

「私の妹、愛する人よ、開けておくれ」心を開けてください」と。

しかし、ここで花嫁はちょっとした不忠実をする。 彼女は応じない。花婿の愛をもっと試したい。

 

5/3 「私は衣を脱いでしまったのにどうしてまた着られましょう。

 足を洗ってしまったのにどうしてまた汚せましよう」

 

彼女には単純さと謙遜がまだない。横着さと安逸におぼれて、生活のいろいろな愛着からまだ十分に浄化されていない。

 

5/4 「わが愛する者が掛け金に手をかけたので、わが心は内に踊りました。」

花婿がドアの取っ手をガチャガチャさせたので、彼女の心は喜び踊った。そしてすぐドアを開こうと起き上がった。

 

5/5 私が起きて、わが愛する者のために開けようとした時、  

  私の手からミルラが滴り、私の指からミルラの液が流れて、

  取っ手の上にこぼれ落ちた。

 

花婿がつけてきたミルラ(香油)の香り、神的な香りが取っ手についてよい香りを放った。懐かしい甘美な香り。 しかし・・・

 

  5/6a  私はわが愛する者のために開いたが、わが愛する者はすでに帰り去った。

 

愛が細やかになると、小さな不忠実も相手を深く傷つける。

花婿は花嫁の内から湧いてくる愛を大切にする。決して自由を束縛しない。戸を開けなければ、心を開かなければ、無理やり中に

押し入られることはない。

   5/6b 彼が帰り去った時、私の心は力を失った。私は尋ねたけれども見つからず、呼んだけれども答えがなかった。

 

彼女はもうじっとしていられない。探し回る。

  5/7 街を回り歩く夜警らは、私を見ると打って傷つけ、

     城壁の見張りらは、私の上着をはぎ取った。

 

前には協力してくれた夜警らは、今は彼女を辱める。自分の目にも、人の目にもみじめな姿になる。神が浄化しようとされる

魂の最深奥の苦悩は、煉獄の苦しみと変わらぬほどである。*3 彼女はこの苦しみの中で謙遜を学ぶ。

 

  5/8  エルサレムの娘たちよ、私はあなた方に誓ってお願いする。

      もし私の愛する者を見たなら、私が愛のために病み患っていると、彼に告げてください。

 

彼女はへりくだって願う。愛には苦しみがつきもの。苦しみによって強くなる。

 

  6/1   女の内の最も美しいものよ。あなたの愛する者はどこへ行ったか。

     あなたの愛する者はどこへ赴いたか。私たちはあなたと一緒に尋ねよう。

やっと愛する者を探し当てる。前には花婿を自分の方へ引き寄せようとした花嫁は、今は、花婿の住まわれるところへ赴く。


6/2  わが愛する者は園の中で群れを飼い、ユリの花をとるために自分の園に下り、芳しい花の床に行きました。

私はわが愛する人のもの、わが愛する者は私のものです。

彼は百合の花の中で、その群れを飼っています。 

 

そこで花嫁は、花婿のこの美しさに新たに目を開く。

  6/4   わが愛する者よ、あなたは美しいことテルザのごとく、

麗しいことエルサレムのごとく、

恐るべきこと、旗を立てた軍勢のようだ。

あなたの目は私を恐れさせるゆえ、私から背けてください。

あなたの髪はギレアデの山を下る山羊の群れのようだ。

あなたの歯は洗い場から上ってきた雌羊の群れのようだ。

 

愛する者の方へ向かいながら、彼女は自分を恥じているので、目も上げられない。そこには王妃や美しいおとめが大勢いて、

へりくだってやってきた花嫁に向かって、次の褒め言葉を歌う。

  6/10 この東雲のように見え、月のように美しく、太陽のように輝き、

恐るべきこと、旗を立てた軍勢のようなものは誰か。

  7/1   もう一度出ておいで、シャラムのおとめ

     もう一度出ておいで、姿を見せておくれ。

 

花嫁は幸福に満たされていう。

  7/10 私はわが愛する者のもの、彼は私を恋い慕う。

 

永遠の一致を誓う。

  8/6   私をあなたの心において印のようにし、

     あなたの腕において印のようにしてください。

     愛は死のように強く、妬みは墓のように残酷だからです。

     そのきらめきは火のきらめき、最も激しい炎です。

     愛は大水も消すことは出来ない。洪水もおぼれさせることが出来ない

 

花嫁の愛は苦しみによって次第に高められ、清められ、彼女自身は謙遜になって、変わらない一致に達する。神は魂の

どんな小さな呼びかけにも答えられるが、一滴の甘い愛を与えるだけでは満足されない。最後には三位一体の永遠の愛の

サークルにまで入れたいと望まれ、導かれる。

 

 注

*1 十字架の聖ヨハネ著 「霊魂の暗夜」第一篇                                       ( C.T )

*2 十字架の聖ヨハネ著 「霊魂の暗夜」第二篇

*3  十字架の聖ヨハネ著 「愛の生ける炎」第一の4節11,12

〃  イエズスの聖テレジア著 「霊魂の城」第六の住居 第11章3

「雅歌」 神と魂の婚礼